花がすべて落ちた鉢を前に、茎を切るべきか、このまま置いていいのか迷っていませんか。
ここでの切り方ひとつで、次の花が咲くかどうかが変わってきます。
植物専門ライターの柳田です。自宅の温室で18年、胡蝶蘭を育てています。
株に力があれば節を残して切り、弱っていれば根元から切る。
この分かれ道と、次の花までの1年の流れをお伝えします。
目次
花が終わったら最初に決めること
ハサミを持つ前に株を見る
花が全部落ちても、すぐに切らないでください。
鉢を目の高さまで持ち上げて、葉、根、花茎の順に見ていきます。
- 葉が大きく、6枚ほど残っているか
- 根の先が緑色でふっくらしているか。しわしわに縮んでいないか
- 花茎が緑色でハリがあるか。黄色や黒っぽく変わっていないか
二度咲きに挑戦してよい株の目安は、JAあいち知多のコチョウランの管理ガイドに出ています。
25cmほどの葉が6枚以上ある成株以外は、二番花を控えたほうが無難とのことです。
二度咲きを狙う株と、休ませる株
見た目の印象だけで決めると、あとで後悔します。
私は次の表のように分けて考えています。
| 株の状態 | 選ぶ切り方 | 次の花の目安 |
|---|---|---|
| 葉が大きく6枚前後あり、根も元気 | 節を残して切る | 数か月後に二番花の可能性 |
| 葉が少ない、小さな株、根が弱っている | 根元から切る | 翌シーズン |
| 花茎が黒ずむ、柔らかい | 早めに根元近くで切る | 株の回復を優先 |
正直に書くと、私は二番花を毎年咲かせていた時期があります。
華やかなので、つい欲が出るのです。
3年目に葉が5枚まで減り、翌年はまったく花芽が上がりませんでした。
ハイポネックスのコチョウランの管理のポイントにも、無理に二度咲きさせると株が消耗し、翌年以降の花つきが悪くなることがあると書かれています。
二番花はおまけ、くらいの気持ちで向き合うのがちょうどいいですね。
花茎の切り方を位置で使い分ける
二度咲きを狙うなら節を残す
花茎には、ところどころに小さなふくらみがあります。
これが節で、薄い皮に包まれた芽が眠っています。
根元から数えて、残した節のどれかが動き出すと、次の花茎が伸びるのです。
残す節の数は、資料によって少しずつ違います。
JAあいち知多は基部の2〜3節を残す、ハイポネックスは根元から数えて3〜4節目の少し上(約1cm)を切る、という書き方です。
私は3節目の上を目安にしています。
手順は次のとおりです。
- ハサミをアルコールで拭く
- 根元から節を数え、3節目を見つける
- 節の1cmほど上で、茎に対して水平に切る
- 切り口を消毒する
株を休ませるなら根元から切る
葉が少ない株や小さな株は、花後すぐに花茎を付け根から切り落とします。
ハイポネックスも、株が弱っているなら無理をさせず、付け根から切って翌シーズンに向けて体力を戻すよう案内しています。
花茎が黒ずんでいたり、触ると柔らかかったりするときも、根元近くで早めに切ります。
これは腐敗のサインだからです。
節を残す余裕はありません。
道具と消毒でつまずかない
胡蝶蘭の切り口は、雑菌の入り口になります。
宮川洋蘭の花後の切り方ガイドでは、切れ味のよいハサミを使い、作業の前後にアルコールで拭くよう勧めています。
私は鉢が複数あるので、1鉢ごとにハサミを拭きます。
面倒ですが、病気を持ち込むことを思えば安いものです。
病気のことが気になる方は、当ブログの胡蝶蘭の病気予防もあわせてどうぞ。
切ったあとの1〜2か月の管理
置き場所と水やりは控えめに
切ったあとは、風通しのよい半日陰に置きます。
直射日光は葉焼けのもとなので避けてください。
置き場所の考え方は最高の置き場所の見つけ方に詳しく書きました。
水やりは、花が付いていたときより少し慎重にします。
JAあいち知多によると、6〜9月は水ゴケの表面が乾いたら与え、冬は乾いてから湿らす程度で足ります。
冬に鉢がびっしょり濡れていると、根が傷みやすくなるからです。
肥料は少し待ってから薄く再開する
切った直後の株は、いわば手術のあとです。
宮川洋蘭は、切後2〜4週間を目安に、薄めの液体肥料から再開するよう案内しています。
ただし、時期によって扱いが変わります。
- 花後が春から夏なら、2〜4週間ほど待って薄い液肥から始める
- 花後が秋から冬なら、肥料は与えず水だけで管理する
ハイポネックスも、秋以降は生長がゆるやかになるので施肥せず、春の新芽が動くまでは水だけで管理するとしています。
肥料の選び方は肥料の使い方にまとめてあります。
二番花が上がってきたら
節を残して切った株は、うまくいけば数か月後に、残した節から新しい花茎が伸び始めます。
JAあいち知多には、2〜3か月後にもう一度花を楽しめるとあります。
ただし確実ではありません。
宮川洋蘭も、必ず咲くわけではないと明記しています。
二番花が咲き終わったら、今度は根元から切ります。
ここでまた節を残すのは、株への負担が大きすぎます。
一番花より小ぶりでも、咲いてくれただけで十分と思うことにしています。
植え替えは花後の暖かい時期に
適期は5月ごろから
植え替えの時期は、資料によって幅があります。
ハイポネックスは4〜6月、JAあいち知多は最低気温が15℃以上になる5〜7月としています。
冬から早春に花が終わった鉢は、すぐ植え替えたくなります。
それでも我慢して、暖かくなるのを待ってください。
根が動く時期に合わせるほうが、傷んだ根も回復が早いのです。
植え替えの目安は、水ゴケが古くなったときと、株が鉢からはみ出してきたときです。
私は2年に1回を目安に見ています。
花茎の処理は、植え替えの前に済ませておきましょう。
植え替えの手順
水ゴケで植えている場合の流れです。
- 水ゴケを水に浸して、しっかり湿らせておく
- 鉢から株を抜き、古い水ゴケをていねいに外す
- 黒く変色して柔らかくなった根を、消毒したハサミで切る
- 健康な根を湿らせた水ゴケで包み、鉢に収める
根は折れやすいので、焦らず少しずつ外してください。
古い水ゴケの中で、根がぎゅうぎゅうに絡んでいることがよくあります。
無理に引っ張らず、水に浸してほぐすと外しやすくなります。
次の花までの1年の流れ
季節ごとの作業カレンダー
花後から次の開花までを、月ごとに並べました。
時期はあくまで目安で、お住まいの地域や室温によってずれます。
| 時期 | やること |
|---|---|
| 4〜6月 | 花後の切り戻し、植え替え |
| 4〜9月 | 薄めの液肥を与える(9月下旬まで) |
| 6〜9月 | 水ゴケの表面が乾いたらたっぷり水やり |
| 夏 | 風通しのよい場所で、強い日差しを避ける |
| 10月ごろ | 室内へ取り込み、最低温度を確保 |
| 11月以降 | 花茎が伸びる時期。温度を保つ |
| 12月〜4月 | 開花 |
春から夏は、葉と根を育てる季節です。
ここで株を太らせておくと、秋以降の花つきが変わってきます。
秋から冬は温度が花を決める
花が咲くかどうかは、秋から冬の温度に大きく左右されます。
NHK出版「みんなの趣味の園芸」のコチョウランは温度で育てるには、押さえておきたい3つの温度が載っています。
- 18℃:最低温度をここで保てれば年間を通して順調に育ち、花芽形成にも適している。9月以降も保てば12月に花茎が伸び、1月に咲く
- 15℃:11月以降にこの温度を保てれば、ゆっくり花茎が伸びて2〜4月に咲く
- 7℃:これ以下になると根の活動が止まり、確実に具合が悪くなる。水やりも中止する
JAあいち知多は最低温度10℃としていて、数字に開きがあります。
私の読みでは、10℃は枯らさずに冬を越す線で、花まで期待するなら15℃以上、できれば18℃です。
窓辺は夜に冷え込むので、最高最低温度計を鉢の横に置いておくと安心です。
暖房を入れた部屋は、温度が足りていても空気が乾きます。
JAあいち知多は、暖房環境ではこまめに葉水をやるか、加湿器を使うよう案内しています。
私も冬の間は、朝の見回りのついでに霧吹きで葉に水をかけています。
温度と湿度の両方が整うと、花茎の伸びが目に見えて安定するのです。
咲かなかった年の点検
手をかけたのに花茎が上がらない年も、正直あります。
そんなときは、次の点を思い返してみてください。
- 冬の最低温度が15℃を下回る夜がなかったか
- 葉の枚数が減っていないか
- 根が傷んでいないか
- 二番花を続けて咲かせていないか
原因が分かれば、翌年に活かせます。
咲かなかった年は、株が力を貯めている年でもあるのです。
まとめ
花が終わったら、まず葉の枚数と根の状態を見て、二度咲きを狙うか、株を休ませるかを決めます。
節を残して切るのは、大きく元気な株だけです。
迷うなら根元から切ったほうが、翌年の花は安定します。
そのあとは、薄い肥料と控えめの水、5月ごろの植え替え、秋から冬の温度管理。
この流れを一巡させれば、また花を見られる可能性は十分にあります。
18年育てて思うのは、花を咲かせる年より、咲かせない年の過ごし方が株の寿命を決めるということです。
まずは鉢を持ち上げて、根の色を見てみてください。